大会前に乗鞍ヒルクライム(HC)のコースを実走してタイムを計るつもりでいたのですが、親の生活支援の都合で暑い夏の間の外泊が難しくなってしまった。ダメと言われると余計に行きたくなる…ならばと「近場の練習タイムから大会(乗鞍HC)のタイムを予測できないか」考えてみた。
乗鞍HCは距離も長いし標高差も大きいので、近場の練習タイムをそのまま倍数掛けて延長するよりは、タイムは悪くなると思う。陸上のVO2maxを参考に、その悪くなるタイムの程度について考えてみた。
VDOTからヒルクライムのタイムを予測する (2022年8月1日)
精度改善のポイントは以下の3つ:
- 自転車ヒルクライム(HC)とランニング(RUN)の比較(乗鞍HCを何kmのRUNと考えるか)
- 長い坂と短い坂の比較(運動時間の差異)
- 標高の影響をどこまで考慮するか(VO2maxへの影響)
1.自転車ヒルクライムとランニングの比較
そもそも同列に扱うのは無理があるのは承知の上ですが、いずれの運動も一定負荷で1時間程度継続することから、乗鞍HCをランニングに置き換えて考えてみます。その時に何kmのRUNと見做すかを考えます。データにおいて、乗鞍HCは直近が2019年しかなく、RUNも同年のデータとします。また、乗鞍HCはアマチュアで、RUNの実業団はプロであり、同列で比較するのは気が引けますが他にやり様も無く、これでやってみましょう。
第4回日本ハーフマラソンランキング/全日本実業団ハーフマラソン2019から、年代別ランキングおよび全日本実業団ハーフからハーフマラソンの上位3位の平均タイムは下表のとおりです。
男子61歳 | 男子62歳 | 女子30歳 | 全日本男子 | 全日本女子 | |
1位 | 1:22:10 | 1:20:46 | 1:10:04 | 1:01:33 | 1:09:27 |
2位 | 1:23:11 | 1:22:59 | 1:12:37 | 1:01:33 | 1:09:53 |
3位 | 1:24:14 | 1:23:07 | 1:13:29 | 1:01:34 | 1:10:16 |
平均 | 1:23:12 | 1:22:17 | 1:12:03 | 1:01:33 | 1:09:52 |
次に、マウンテンサイクリングin乗鞍2019リザルトから、乗鞍HCの男子G61~70歳・男子チャンピオン・女子の3つのクラスの上位3位の平均タイムは次の通りです。
男子G 61~70歳 | 男子 | 女子 | |
1位 | 1:11:53 | 54:42.0 | 1:06:49 |
2位 | 1:11:59 | 54:43.3 | 1:07:00 |
3位 | 1:12:00 | 54:51.6 | 1:09:10 |
平均 | 1:11:58 | 0:54:46 | 1:07:39 |
仮想距離(km) | 18.4 | 18.8 | 20.4 |
男子60歳台・男子・女子をそれぞれ比較、それらの時間から乗鞍HCをRUNに置き換えた場合の仮想距離は、それぞれ18.4km・18.8km・20.4kmとなります。スッキリとは行きませんでしたが、ここではRUNに置き換えた場合の仮想距離を19.0kmとして計算を進めてみます。
2.長い坂と短い坂の比較
運動時間に差異があるときのパフォーマンス(例えば平均速度)の換算は、自転車HCのものは分からなかったので、ランニングのVDOT(※)から計算します。詳しい計算式は分からず、表3.1 代表的なレース種目のVDOT から推定します。
乗鞍HCを19kmのRUNとしましたが、近場の坂を上った時をRUNに換算したときに何kmになるかを考えます。HCは登攀抵抗の割合が大きいので標高差が大きな要素となり、他の要素として距離も検討します。
菖蒲谷HC | 乗鞍HC | RUN換算距離 | |
標高差(m) | 318 | 1260 | |
1 | 3.96 | 5.32 | |
距離(km) | 4.3 | 20.5 | |
1 | 4.77 | 4.43 |
乗鞍HCを19kmRUNとした場合、菖蒲谷HCは標高差から考えると5.3kmのRUNに、距離から考えると4.4kmのRUNに相当すると考えられます。推定の幅があるので、とりあえずは距離5kmのRUNとします。
※ダニエルズのランニング・フォーミュラ (株)ベースボール・マガジン社発行 2012年
3.標高の影響をどこまで考慮するか
標高が高くなると空気の密度が下がり、吸入できる酸素分圧は低下します。高地トレーニングって何?によれば、「標高1500mまでは最大酸素摂取量はほとんど変わりませんが、1500mを境に、1000mにつき10%の低下率で減少していきます。」とあります(p9、図1の説明文から)。乗鞍HCのスタート標高が1460mなので、VO2maxへの影響がある領域です。
(なお標高1500mを境にとありますが、標高1500mの気圧は平地の83%(=83.96/101.3)で、平地での酸素濃度に換算すると17.4%相当(=21%*0.83)となります。日本の法律の安衛法の酸欠の定義でも18%未満とされているので、まあまあ妥当なところと思います。)
で、VO2maxが1000mにつき10%の低下率で減少を乗鞍HCに当てはめると、1260*0.5*/1000*10%で、平均6.3%低下と考えられます。これをVDOTに当てはめると、30~40のレベルなら2程度の差になります。今の私のRUNは表にある最弱レベルなので乗鞍HCで2時間6分ということになります。一方、今の私の自転車では菖蒲谷HCはおよそ24分なので、乗鞍HCでは1時間44分の予想となります。

誤差要因を考えておくと、近年の私はRUNの大会の前に練習するだけで、ランニングの効率(=フォーム)が悪くてVDOTが低く評価されたのかもしれません。涼しくなって外泊できるようになれば、乗鞍を実走して確認したいと思います。
また、菖蒲谷も1回登るタイムだけでなく、2~5回と繰返して登って計測して、自分のVDOT表を作っておくと、運動時間が伸びたときの速度の変化が見られて面白いと思います。がんばるぞ~。
近場の坂で乗鞍ヒルクライムのタイムを予測する(2022/6/3)
乗鞍ヒルクライムで目標タイムを設定した時、どれくらいの出力(W)が必要なのかは、以前に作ったツールで計算できる(少し低めな気もするが)。自分の場合は、体重+機材の総質量が66.45kg、目標タイムを1時間20分とすると必要な平均パワーは196Wだ。
ここまでは良いんだけど、乗鞍は気軽に行ける距離でもなく、近場(例えば菖蒲谷)の坂を登ったタイムから、乗鞍のタイムを予測したいと思いました。つまり乗鞍で1時間20分を出すには、菖蒲谷は何分で登れれば良いのか?が知りたいなあ。

自転車のヒルクライムレースは大体が集団だから空気抵抗の要素も大きく、そのためか雑誌でもあまり話題にならないが、陸上のマラソンの場合は5km・10kmやハーフの持ちタイムからマラソンのタイムを推定するのって結構熱心にやってる。論文にもなってる。マラソンの推定は、最大酸素摂取量(VO2max)と走る速度の相関あり、距離別にデータをそろえて、推定式を見出したのだろう(たぶん)。
ダメ元で、自転車のヒルクライムも陸上と同様にVO2maxと走行速度に相関があるとして、考えてみた。マラソンタイム予想法いろいろからダニエルズ式で求めてみた。計算もこちらにあります。
単純化のために、タイムが同程度のもので代用します。トップレーサーでみるとハーフマラソンと乗鞍ヒルクライムは同じくらいのタイムなので、5kmと10kmを各々約1/4と約1/2の坂に見立ててタイムを求めてみます。乗鞍ヒルクライムのコースは、標高差1260m・距離20.5kmなので、約1/4坂は標高差313m・距離4.9kmでちょうど菖蒲谷の標高差318mが同じ位です。(約1/2坂は近くにないので、気にしない)タイムが分かればパワーWも計算できます。

その結果、乗鞍ヒルクライムを1時間20分とすると、約1/4坂で17m27sとなります。単純な1/4は20分なので10%以上も短縮しないといけないんだな。菖蒲谷の自己ベストは22m55sだったので、そのパワーは168Wで、この菖蒲谷の自己ベストから乗鞍ヒルクライムを予測すると1時間33分も掛かることになります。
もう一つ、目指す乗鞍ヒルクライム1時間20分の場合のパワーは196Wで、同じパワーで菖蒲谷を登れば19分45秒! さらに、同じVO2maxで挑むと17分26秒でパワーは222Wだよ。うーん、こりゃ無理だわ。乗鞍100分って遅いと思ってたけど、計算してみると156Wを100分間も出し続けられないと到達しない訳で、立派だったんだなぁ。
(※ダニエルズ法で求める場合は、正しくはVDOTらしいです)
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