栄養/Nutrition

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ダイエット/減量

義甥がダイエットいわゆる糖質OFFの様なことを時々しているらしい。食べた物のカロリーを計算してるらしいが、タンパク質(の内容)は気にしてなさそうな話…。今時の若い人はきっと知識が豊富なんだろうと思ってたが、みんながそうだとは限らないわな。

私はマラソンで3時間切りを目指していた過去に何度か減量にトライしてましたが、消費カロリー分を補給しないで減量しようとすると、なんだか故障し易い様に感じていました。ある日TVでトライアスリートの上田藍さんもそんな感じの発言されてるのを見て、ああ、自分だけの事ではなかったのね!と気付きました。ダイエットについて、考えてみました。

故障し易い?その理由

(対象は運動している人です。)

消費カロリー分を摂取できないと、糖分がない訳だから、脂肪やタンパク質を分解して補われる事になる。 当初は、糖分・タンパク質・脂肪の分解されやすさの順は活性化エネルギーで決まるから、燃焼カロリーの順(それぞれ4・4・9 [kcal/g])になるから、脂肪が後回しになるんだろうなぁと思っていたが、調べてみるとちょっと違った様だ。

タンパク質は常に分解・再生されており、不足すると再生が間に合わなくて、筋肉量が減る(*1)。脂肪の分解には酸素が多量に必要で、高負荷で酸素が足りない時はより効率の良い糖分が優先的に分解される(*2)、ということらしい。

減量中は、アンダーカロリー(消費>摂取のこと)のはずで、食べる量を減らす事が結果的にタンパク質が不足させるんだろう。脂肪の分解は低負荷運動に限定されるから、中~高負荷のトレーニングを行っていると、そのエネルギーを補うために、基礎代謝に上乗せしてタンパク質を分解してエネルギーとして使わざるを得なくなる場合も有り得るって、って感じなんかな。そうなればトレーニング後の超回復も遅れ、回復どころか疲労が溜まり(回復待ちの筋肉)、筋力低下に繋がって、故障に至るといったところかな。

*1 https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=184&category=health 「…タンパク質は常に代謝を繰り返しており、古くなったタンパク質はアミノ酸に分解され、尿から排泄…」

*2 https://tarzanweb.jp/post-188214 「脂肪は大きい分子だから利用するときに酸素が80個必要。一方、糖質の代謝は6個の酸素で事足りる…」

「有酸素」運動、無酸素運動

それなら、タンパク質を大量に摂れば済みそうな気もするが、上手く行ったという話は聞いたことがない。エネルギーの収支(つまり、カロリー)だけに着目しても難しそうだ。

ダイエットの目的を体重を減らす事ではなく、不要な体脂肪を減らすという事にしよう。つまり、運動時の脂肪燃焼効率をどうやって高めるかって事にしよう。

よく「有酸素」運動を取り入れるとか聞くけど、そもそも「有酸素」「無酸素」ってどんな定義なの?負荷の比較的軽い(運動強度の小さい)運動が有酸素性運動(エアロビクス)で、短い時間に大きな力を発揮する強度の高い運動が無酸素性運動(アネロビクス)らしい(*3)(*4)。

*3 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-072.html

*4 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-055.html

問題はその時のエネルギー源(つまり代謝)で、有酸素性エネルギーでは脂肪酸が主で、無酸素性エネルギーではグルコースが主に利用される。脂肪酸のエネルギー分解は、運動強度が65%VO2max(最大酸素摂取量)で最大となり、20%VO2maxと85%VO2maxでは低くなる(*5)。65%VO2maxって難しそうな気もするが、超ザックリと言えばランニング等の1時間以上継続できる範囲で約半分の強度って感じだろうか。(半分の強度といっても、普通はヤリ過ぎだからね)。しかも、この領域で反復継続してトレーニングをすると、エネルギー源の脂肪酸の比率が大きくなる!(*6) 70%との実験結果もある(*7)

運動強度と脂肪燃焼

*5  Regulation of endogenous fat and carbohydrate metabolism in relation to exercise intensity and duration  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8214047/

*6 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-001.html

*7 運動強度と運動時間から見た脂質代謝特性掲載誌 大阪体育大学紀要 = Bulletin of Osaka University of Health and Sport Sciences / 大阪体育大学研究委員会紀要部会 編 35 2004.3 p.39~50 https://ci.nii.ac.jp/naid/110004689002

そうすると、(1)代謝で分解されるタンパク質は補う必要がある (2)65~70%VO2maxの運動を増やす(ことで脂肪を分解燃焼させる) ということかぁ。

摂取すべきカロリーとタンパク質

ではどれだけのカロリーとタンパク質を摂取すべきなのか? やっている運動は人それぞれなので、ベースの一般論では次の通り。厚労省からレポートが出ています:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書(*8)

*8 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html

どれだけのカロリーを摂取すべきかは、おおよそ確定されている:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586556.pdf

  • 年齢との相関あり、20歳で47 [kcal/kg体重/日]、60歳で37[kcal/kg体重/日] (図 11  年齢別に見たエネルギー消費量(kcal/kg 体重/日)(集団代表値)より)
  •  18〜29歳で23.7 [kcal/kg体重/日]、50〜64歳で 21.8 [kcal/kg体重/日] (表5 参照体重における基礎代謝量 より)

とあるから、①の年齢との相関が大きいのは、基礎代謝よりも運動等の活動量の違いが大きな要因な訳だ。基礎代謝は驚くほど小さくて、体重が約65kgの場合で約1500kcal/日らしい。

消費エネルギー、20歳と60歳の例

必要なたんぱく質は、研究や分析方法によって差があるが、運動が少ない人で約「一日当たり体重kg」(g)ということらしい。https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586557.pdf

  • p109 ・・・「たんぱく質維持必要量を 0.66 g/kg体重/日」・・・

なのだが、これには注釈があり、「ただし、…この維持必要量は、良質な動物性たんぱく質における維持必要量…」 「(維持必要量)=(良質な動物性たんぱく質における維持必要量)/(日常食混合たんぱく質の利用効率)」 「…推奨量算定係数を 1.25 とし、…(推奨量)=(推定平均必要量)×(推奨量算定係数)」

  • p116 表8 身体活動レベル別に見たたんぱく質の目標量(g/日)(非妊婦、非授乳婦)

身体活動レベルという言葉が出てきて、定義(*7)から、「…スポーツなど…活発な運動習慣…」は高い(III)にあたる。自分の年齢(50~64歳、男)は103~148(g/日)となっている。参照体重(*10)の68kgから、自分の体重53kgに割り戻すと80~111(g/日)と相当多くなり、よく言われる体重kg分の約2倍にあたる。

活動レベルⅢの推奨タンパク質の例

*9 https://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/11/h1122-2a.html

*10 p11の表3 参照体位(参照身長、参照体重) https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

それで、どうするのか?

運動する習慣のある人の場合、タンパク質の摂取推奨量は、おおまかに言って「一日当たり体重kgの2倍」(g)。これだけのタンパク質を取っておかないと、基礎代謝に加えてトレーニング後の超回復のための量が不足し、脂肪を減らしているつもりが、実は減っているのは筋肉だった…なんてことになりかねない。

また、脂肪を減らすなら、65%VO2maxまでの負荷で運動をするのが王道だろう。この負荷というのは、30分間くらいなら軽いランニング程度感じだろう。(VO2maxと心拍数は必ずしも同じではないが、似たパラメータで、心拍数が平常時60bpm、最大180bpmと想定すると、65%は平常60+(最大180-平常60)×0.65=138bpmとなることから) さらに、この有酸素運動は反復する事でその効率が上がるらしいので、負荷は低くても良いので頻繁に運動…しかしかない。

一方で、スポーツのある種目で上手くなりたいと思ってトレーニングで頑張ってしまうと、簡単に65%VO2maxを越える高負荷になるから、軽めの負荷で行うことが肝心。そのためには、通常のトレーニング後に、追加で30分ほど軽くジョギングするなど地道な作業が必要になってくる。キャリアが長いアスリートは見えない所で努力している訳だけど、有酸素運動を頻繁に行うのは意外と難しいかもしれないなぁ。

食事の例

これらが多いのか少ないのかは、すぐには分からないので、自分の例を当てはめて検証してみました。

  • 朝食:牛乳浸けのシリアル、果物、ヨーグルト、トマトジュース、コーヒー(約カロリー630kcal、タンパク質16g、脂肪18g)
  • 昼食:蕎麦、豆腐、サラダ(約カロリー670kcal、タンパク質18g、脂肪22g)
  • 夕食:魚、スープ、米(約カロリー920kcal、タンパク質42g、脂肪20g)
  • その他:塩羊かん、ビール、ナッツ(約カロリー790kcal、タンパク質42g、脂肪20g)
  • 小計(約カロリー3230kcal、タンパク質102g、脂肪100g)
朝食の例
昼食の例、この日は豆腐の代わりにオムレツ

これを見たら、夕方以降でエネルギー補給しているが、例えば午前中にトレーニングすると朝昼で沢山食べるのはちょっと難しいなぁ。

思った事/感想

  • 食事の制限/制約で体重を減らす、と言う考え自体が古く、今となっては不合理
  • 脂肪を減らすという事に置き換えると、摂取している栄養(カロリーを含む)の把握および運動による脂肪の燃焼が大事
  • 自分の場合はむしろ栄養不足気味と判明。(有酸素運動をやっていたら運動に充てる時間が精一杯で、過食にはならんけどなぁ。)

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